気候変動に関するデューデリジェンスの質問事項
本質問事項には、デューデリジェンスにおいて、対象企業の法令遵守に関する典型的な質問にとどまらない、より幅広い気候変動問題に関する事項を検出するための質問を列挙しています。
本質問事項には、デューデリジェンスにおいて、対象企業の法令遵守に関する典型的な質問にとどまらない、より幅広い気候変動問題に関する事項を検出するための質問を列挙しています。
本質問事項の目的は、買主が、対象会社におけるネットゼロへの移行に向けた対応状況、レジリエンス、及び将来の気候変動リスクに対する対応能力等を評価することです。買主は、本質問事項に対する回答を踏まえて、売主に対して、適切な表明・保証を求め、また、発見された気候変動リスクを踏まえた取引価格について交渉することにより、買収に先立ち気候変動に関する投資リスクと投資ポジションを保護することができます。
気候変動に関わるデューデリジェンスの質問事項
イントロダクション
我々は、[会社]又は特別目的会社(以下「買主」といいます。)が、[株主](以下、総称して「売主ら」といい、また、単独で「売主」といいます。)から、[****]年[**]月[**]日付基本合意書に定める条件に従い、[対象会社](以下「対象会社」といいます。)の発行済株式の全てを取得する取引(以下「本件取引」といいます。)の提案に関連するデューデリジェンスレビューの一環として、この情報リクエストを行います。
[買主における気候変動に関連する問題の戦略的重要性に関する段落を挿入してください(例えば、企業戦略に言及する等)。]
買主は、対象会社が気候変動に関連する問題に対してどのように取り組んでいるかを理解するために、この情報リクエストを行います。対象会社は、回答に際しては、以下の回答ガイドラインに従い、開放性かつ透明性を尊重してください。買主は、対象会社が「完璧」であることまでは期待しておらず、もし特定の分野においてこれまで十分な対処がなされていない場合には、対象会社が正直に情報を提供することを望んでいます。
回答ガイドライン
[買主のリーガルカウンセルは、標準的な回答ガイドラインを挿入ください。]
この情報リクエストは初期的なものであり、今後さらに追加で情報をリクエストする可能性があります。
この情報リクエストに対する回答は、本件取引に関連する法的文書における表明・保証を目的とした開示ではありません。
質問事項
以下の質問に対する回答及び関連する書類の写しを開示してください。
排出削減目標と報告
1. 対象会社は、ネットゼロ目標、科学的根拠に基づく目標 (Science Based Targets)、カーボンバジェットを設定しているか。また、対象企業は、Race to Zeroに参加しているか。*
2. 以下の事項を含む、質問1の目標を達成するための対象会社の計画の詳細。
a. タイムラインと短期、中期及び長期の暫定目標。
b. 脱炭素化計画が、(i)温室効果ガス排出量を10年ごとに半減するという目標(前年比で最低7%の削減) **、(ii)世界の気温上昇を産業革命前のレベルから+1.5℃に抑えるという目標、及び(iii)パリ協定におけるその他の目的にどのように適合しているか。
c. スコープ1、2及び3の排出量ごとに分類された排出量削減目標(定期的に更新されるThe Greenhouse Gas Protocol: A Corporate Accounting and Reporting Standard, Revised Edition 2015の分類に従う。)。***
d. ネットゼロを超える、ネットマイナス([対象会社によって]大気から除去される温室効果ガスが、[対象会社の]温室効果ガスの排出量よりも多い状態)を達成するための計画。
e. 対象会社が質問1の目標に対する進捗状況の報告を、公表又はその他の形式で行っているか否か。
3. 以下の事項を含む、対象会社によるすべての温室効果ガス排出量(又はカーボンフットプリント)の測定結果と報告の詳細。
a. 計算に使用された基準。
b. 同業他社及び/又は業界標準と比較したベンチマーク。
c. 温室効果ガス排出量(又はカーボンフットプリント)に関する報告の第三者機関による認証。
d. その他一切の温室効果ガス排出量に関する報告又は公表事項。
4. 対象会社が、気候変動及び/又はサステナビリティ目標の達成を、契約及び他の当事者との関係にどのように組み込んでいるかについての詳細。
5. 対象会社が、気候関連財務情報開示タスクフォースの勧告に従って、気候変動リスク及び機会を評価及び開示する方法についての詳細。
* より詳細な情報と文言の典型例については、TCLP Glossary: Net Zero Target、TCLP Long-Term Science-Based Target、TCLP Near-Term Science-Based Targets、TCLP Glossary: Carbon Budgetを参照ください。
** 7%の根拠については、Carbon Law、及びA roadmap for rapid decarbonizationを参照ください。
*** スコープ1、2、及び3の温室効果ガス排出量については、The Greenhouse Gas Protocolの27頁で定義されています。
ガバナンス
6. 対象会社において、いずれの事業部門が気候変動の測定、管理及び報告に責任を負うか。同部門の役割の詳細及び最近実施された測定の結果又は取締役会に提出された報告の内容。
7. ①対象会社において、主に気候変動リスクの測定、管理、及び報告に責任を負う取締役、執行役員、又はサステナビリティの向上とカーボンフットプリントの削減の経験があり、これらの問題について助言する非常勤の取締役が存在するか否か。②仮に存在する場合、当該業務を実行するうえで要求される専門性、注意義務、説明責任及び当該業務を実行するために要求される専門知識、資格、又は専門家の助言体制の詳細に関する情報。③気候変動問題と対象会社の事業への影響に関する最近の取締役会の議論の例。
8. 対象会社における、サステナビリティポリシーの写し及びかかるポリシーに対する適合性を評価するために設定した重要業績評価指標(KPI)の詳細。
9. 対象会社において、気候変動問題が対象会社の企業戦略/事業計画においてどのように考慮されているか(国連の持続可能な開発目標(SDG)13(気候変動対策)に照らしてマッピングされた例を含む。)についての詳細。
気候リスク、気候変動への適応、レジリエンス
10. ①対象会社における、気候変動リスクに関する管理簿の写し。②仮に管理簿が作成されていない場合、事業に対する既知の若しくは合理的に予見可能な気候変動リスク、又は気候変動が事業に及ぼす可能性のある法的、財務的及び商業的影響の詳細(かかる商業的影響の例としては、異常気象によるサプライチェーンへの影響、気候変動による操業コスト増加の可能性、政策、規制若しくは技術の発展又はネットゼロへの経済的な移行における利害関係者の選好による収益の減少の可能性又は気候関連の法的責任リスクが含まれる可能性がある。)。
11. 対象会社が、物理的な気候変動リスクを最小限に抑えるために講じた一切の気候変動への適応策又はレジリエンスの方法の詳細。
公正な移行 ***
12. ローカル及びグローバルな利害関係者(従業員、顧客、エンドカスタマー及びサプライチェーンパートナーを含む。)が、気候変動リスク、公正な移行及びレジリエンスを向上させるために講じられた措置によってどのように影響を受けるかという点に関する分析の詳細。
13. 対象会社が、気候変動及び公正な移行を会社の意思決定にどのように組み込んでいるのかとの点に関する詳細。
14. 取締役会の決定において気候変動又は公正な移行に関する要素が以下のように取り扱われたことがある場合には、当該決定の詳細。
a. 気候変動又は公正な移行に関する要素について、他の商業的要因よりも深く考慮されていた場合。
b. 気候変動又は公正な移行に関する要素が、他の商業的要因が優先されたため、無視された場合。
15. エンゲージメント、情報共有、資金へのアクセス、能力開発又はその他の種類の気候に関するリーダーシップを通じて、他者が(ネット)ゼロに向けた世界的な移行に貢献するための方法の詳細。
***「公正な移行」の詳細については、The European Bank for Reconstruction and Development の”What is a just transition?”を参照してください。
金融と投資
16. ①気候変動関連コストの上昇が事業に及ぼす潜在的な影響について、対象会社が実施した一切の評価の詳細。②気候変動関連コストの増加が事業の収益性に重大な影響を与える可能性があるか否か。③もし②の可能性がある場合には、どのような軽減策が検討されているか。
17. 対象会社が、過去5年間に気候変動関連インシデントに費やした金額(ここで、「気候関連インシデント」とは、[定義を挿入]をいう。)。
18. 対象会社がエシカルファンドに行った一切の投資の詳細。
19. 対象会社の年金制度が原則としてエシカルファンドに投資されているか否か。
20. 対象会社による気候変動の影響を緩和するための環境保護活動への寄付の有無。
立法及び規制リスク
21. 対象会社の事業に影響を与える可能性のある、対象会社が現在事業を行う法域において存在し、又は提案されている気候変動に関する法律及び規制の詳細。
22. 以下の事項を含む、もっともらしい気候変動の将来シナリオに対する対象会社の戦略及びビジネスモデルのシナリオ分析又はストレステストの詳細。
a. 2℃を「十分に下回る」又は1.5℃への急速又は破壊的な移行シナリオ。
b. 4℃以上の温暖化シナリオ。
23. 対象会社が現在行っている一切の気候変動関連の啓発・啓蒙活動の詳細。
24. ネットゼロへの移行に伴い、対象会社において何らかのビジネスチャンスが生まれることが見込まれるか否か(仮に見込まれる場合には、その詳細)。
雇用
25. 対象会社における、気候変動問題又はサステナビリティに関連する目標の達成に紐づいた従業員、取締役又は株主の給与、手当又は報酬の有無及びその詳細。
26. 対象会社において、従業員に対して、気候変動に関連する問題が対象会社の事業に対して与える影響に関する情報又は研修が提供されているか否か及びその詳細。
27. その他、対象会社において、気候変動に関連する問題全般について従業員を教育するため、あるいは、環境に対してポジティブな影響を与え得るような事業活動又は
慣行の変更に関して従業員との間で協議するために実施している活動の詳細。
28. 対象会社の従業員に対して提供される「グリーンな」雇用に関する手当、条件又はイニシアチブ及びそれらの普及率の詳細。
29. 対象会社において、従業員の移動/通勤によるCO2排出量を削減するための指針が策定されているか否か。
競争
30. (対象会社が認識している限りにおいて)、対象会社の競合他社が、気候変動から生じるビジネスへのリスク及び機会を軽減又は把握するために行っている活動の詳細、及び対象会社における同様の活動を同業他社の行動と比較した場合の評価。
31. ロビー活動、業界団体への加盟及び政治的な見解をパリ協定と整合させるための対象会社の指針及び手続の詳細、かかる指針及び手続が報告又は周知されているか否か、及びどのように見直しがなされているか否か。
32. 対象会社が、環境に重大な悪影響を及ぼした事業上の活動、慣行又は成果を認識しているか否か(認識している場合には、その詳細)。
気候に配慮した契約及び調達
33. 対象会社において、商品又はサービスを調達する際に実施している気候変動、サステナビリティ又は社会に関するデューデリジェンスの詳細。
34. 対象会社が、商品又はサービスの供給に関する契約において定めている環境又は社会に関する義務の詳細。
35. 対象会社において、環境に優しくないもの(又は、コスト等の他の要因によって、よりサステナブルな選択肢が排除されている)と認識している契約の詳細、及びこの理由による解除又は再交渉の権利の詳細。
オフセット
36. 対象会社がその事業からのCO2排出量をオフセットするために実施する活動の詳細。
a. 対象会社において、オフセットに関する戦略を定めているか否か。
b. 対象会社が、CO2排出に関する緩和策の優先順位に従っているか否か(例えば、温室効果ガスの排出量を削減するためのあらゆる合理的な努力を尽くした後にのみ、温室
効果ガスの排出量をオフセットし、より多くの排出量を削減できるよう、随時このアプローチを見直している等)。
対象会社が、認知された自主基準又は国連気候変動枠組条約クリーン開発メカニズムによって認証されたプロジェクトを通じて、オフセット・クレジットを調達しているか否か。
c. 対象会社によって回避、削減又は除去された温室効果ガスの排出量が、追加的、恒久的かつ認証可能か否か。
d. 対象会社が、購入したオフセットがグローバルな公平性及びより広い社会・環境目標に対して持つ意味合いを考慮しているか否か。
e. 対象会社が、その依拠するオフセット・プロジェクトについて、数千年に亘る逆行のリスクが低いような長期保管方法に移行することを計画しているか否か。
f. 対象会社が、その依拠するオフセット・プロジェクトについて、他者による排出量を回避し又は削減するのではなく、排出量を除去する純粋なオフセットに移行することを計画しているか否か。
環境及びサステナビリティ
37. 対象会社が、環境及び関連する社会的影響を最小限に抑えるために、例えば以下のような措置を行っている場合には、その詳細。
a. 可能な限り、リサイクル品・梱包材を使用する。
b. 環境に優しい生産方法を使用する。
c. ローカルな低炭素材料及び労働力を利用する。
d. サーキュラーエコノミー及び廃棄物ゼロの原則を実施する。
e. コミュニティのプロジェクトに余剰材料を提供する。
f. 低炭素製品の製造に関する研修に投資する。
g. 取り上げられることの少ない(少数派の)グループが、新たなグリーン雇用機会を享受できるよう援助している。
h. カーボンフットプリントをオフセットしている。[注記:必要に応じて、詳細な措置をご記載ください。]
38. 対象会社の事業がオンラインで運営されている場合、顧客は、商品又はサービスの購入時に、その商品又はサービスの運搬によって生ずるカーボンフットプリントを、オフセットの対象として選択できるか否か。
39. 対象会社が採用している再生可能エネルギー技術の詳細。
40. 対象会社は、(i)再生可能エネルギーの料金プランにしたがって光熱費を支払っているか否か、及び/又は、(ii)再生可能エネルギーでサーバーを運用するWebホストやクラウドサービスプロバイダーを使用しているか否か。
41. 対象会社において、BREEAM 等の一般に認知されたグリーンビルディング・プログラムの要件を充足すると認定されている施設があるか否か。
42. 対象会社の施設のエネルギー性能証明書の写し。
43. 対象会社が、その事業による環境に対する影響に関して収集したデータの詳細。対象会社において、廃棄物発生量、エネルギー使用量、水使用量及び温室効果ガス排出量を対象とする環境管理システム(EMS)は存在するか否か。
44. 対象会社において、環境データを収集し又はEMSを維持しているか否か、また、それらが対象会社の施設の環境改善や省エネルギーに寄与しているか否か(その場合には、どの程度寄与しているか)。
45. 対象会社が、廃棄物をリサイクルするために行っている措置の詳細。
46. 対象会社において、廃棄物を埋立地に搬送することはあるか否か。
47. 対象会社が、定期的に購入又は消費している使い捨てプラスチック製品の詳細。
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